■Kar98kと取り扱い 図解マニュアル





1936年に発行されたKar98k用の図解マニュアル。1934年に生産が始まったKar98kは、1936年時点での生産数が約30万挺にとどまり、本格的な配備はこれからという段階。本書ではKar98kをカラビナー(Karabiner)と称している。序文にもあるように本書は教範を補う目的で作成されており、文章量は最小限、イラストや写真が多用されている。

表紙はエンボス加工、中も上質な光沢紙が使用されており第二次大戦中のマニュアルと比較し高級感がある。横17×縦10cm、116ページ。






すべてのページで右:イラストや写真、左:解説文という構成。

以下、全文の日本語訳と全てのイラスト・写真を掲載する。イラストや写真の向きはマニュアルの掲載向きに準じている。




カラビナー98k(短)とその取り扱い

新しい歩兵訓令 A.V.I. 2a および『射撃兵器98』規程に基づく

ある歩兵将校による

ベルリン 1936年



序文

本書はGewehr 98に関する図解書に密接に倣って作成された。というのも、Gewehr 98と Karabiner 98 kurz(K98k)の相違はごくわずかだからである。

この種の図解書は規定・教範を補うためのものであり、置き換えるものではない。したがって本図解書で学習・精読する際には、常に該当する規定および「Unterrichtstafel 98」(98用の教育図表)を手元に置いておくこと。規定の項目番号は本文中で随時引用してある。A.V.I. 2aの改正事項、1934年の射撃規定、ならびに H.Dv.257 「Schußwaffen 98」(1935年9月6日付) の改訂内容は反映済みであり、Reinigungsgerät 34(D.110)という新型清掃具についても同様に考慮してある。

カラビナーを部隊で装備している場合には、訓練においては呼称「Gewehr(小銃)」を用いること(A.V.I. 2a 第7ページ、第1段落)。




図1
1. Karabiner 98 kurz(K98k)の各部名称

1 = 銃身
2 = 照準装置:リアサイトとフロントサイト
3 = 閉鎖機構/ボルト
4a =銃床一式
4b =ハンドガード
5 = 留め金具
 下留め金具〈スリング環付き〉、上留め金具、着剣装置
6 = 通し棒/クリーニングロッド
 銃身内の異物を除去するための棒。K98kでは3本ではなく4本※をねじ継ぎで連結して用いる。

【※訳注釈】初期のKar98kはクリーニングロッドが短い(25cm)ため4本使う。その後、32cmへ延長されたクリーニングロッドでは3本を連結して使用する。

Karabiner 98k と Gewehr 98 の相違点

K98kは0.2kg軽量、14cmほど短い。
野外では取り回しがよい。
命中率(弾道性能)は 400 m までは同等。
発射炎(マズルフラッシュ)はより大きい。




図2
銃身

1 = 銃身
2 = 薬室
3 = ライフリング部=施条部
4 = 銃口

a = 4つの溝 … 銃身内壁にらせん状に切り込まれている溝。
b = 4つの山 … 上記の溝に対して残った銃身内壁の部分(ライフリングの山)。
c = ボア … 銃身の内径の孔(ボア)のことを Seele と呼ぶ。
d = ボア軸 … 銃身の中心を通る縦軸を Seelenachse と呼ぶ。

Karabiner 98kの銃身は Gewehr 98より14cm短い。




図3
リアサイト

照尺板/サイトリーフの上面と下面には100から2000の距離目盛が刻まれている。

照準設定は左手の親指または右手で2:解放ボタンを押し、3:スライダーを所望の距離目盛にスライドさせて行う。
解放ボタンの爪は照尺板側面の刻み溝・ノッチに確実に掛かるようにすること。
図ではリアサイトを「350」に合わせてある(A.V.I. 2a 第41項参照)。

照準合わせはとくに伏せ撃ちの姿勢で訓練すること。




図4
閉鎖装置

構成
レシーバー側に付くボルトストップとエジェクター、引き金機構、箱型弾倉+5発クリップ装填装置、およびボルトから成る。

ボルト〔分解図/図41参照〕

1 = ボルト本体/曲がったボルトハンドル
2 = 撃針
3 = 撃針ばね
4 = コッキングピースとプランジャーおよびプランジャーばね
5 = 安全装置のレバー(フラッグ)
6 = 撃針ナット(撃針の位置・張力を保持するナット)
7 = エキストラクターとカラー




図5
引き金機構と弾倉〔断面図〕

1 = ボルト(閉鎖機構)
2 = レシーバー+ボルトストップ
3 = 銃床
4 = シア(フォーク状シアとシア突起の一体部)
5 = 引き金(トリガー)
6 = トリガーばね
7 = 送弾子ばね(マガジン・スプリング)
8 = 弾倉底板(フロアプレート)
9 = 安全装置(この写真では安全装置が解除されている))




図6
Karabiner 98 kurz のスリング

銃の左側に装着されるKarabiner 98 kurzのスリングは射手が強く締め込むことで、短スリングを用いた各種の銃把(小銃操法の握り・保持動作)をGewehr 98と同様に行うことができる。

スリングスライダー(Riemenschieber)を適切に調整して、スリングのばたつきを防止すること。

スリングを取り外すには、ストッパー金具(Haltestück)をスリングから外す(詳細は H.Dv.257「Schußwaffen 98」第56–59項を参照)。




図7
2. 装填・安全

装填〔A.V.I. 2a 33-37〕

射撃戦闘の目標:
「短時間に多数の命中を得ること!」

そのために伏射姿勢での迅速な継続射撃をとくに練習せよ。

号令:「装填、安全!」
(以下は立射での手順。)

1.左手で銃を胸の前で斜めに構え、銃口はやや左上へ。左肘は腰骨(腰)にしっかり当てる。
2.右手の親指と人差し指でボルトノブ(Kammerknopf)をつかみ、親指第2関節をボルトハンドルの上にかける。
3.ボルトを左へ回して一気に引き、開放する。
4.ここで初めて右手で弾薬ポーチを開き、5発クリップを1本取り出す。
5.レシーバーの切り欠きに5発クリップを差し込み、やや後方へ傾ける。
6.右手の4本指を弾倉底板(Kastenboden)の下側に添え、親指で短く強く押して、5発クリップに沿って薬莢を密着させつつ最後まで弾倉内へ押し込む。
7.続けて右親指を最上段の弾の弾頭先端まで沿わせて送り、弾薬の引っかかりをなくす。
8.右手でボルトを開放時と同じ握りでつかみ、前進させてから右へ回す。前進の際、ボルトが最上段の弾薬を確実につかみ、薬室へ押し込む。右回しでボルトは閉鎖(ロック)される。

注意:装填中は各動作を連続動作として認識し、躊躇なく、すばやく、ただし急ぎ過ぎないこと。

実施条件:
立射、移動中、夜間、ガスマスク装着時、伏射、散開隊形でも行える。

(削除項目):
号令「ひざまずいて装填!」(Laden im Knien!)は廃止。




図8
安全装置

小銃を安全状態にする方法
右手の親指と人差し指で安全装置のレバーを右側へ倒す。(A.V.I. 2a, 第36項)

解除
上記とは逆の操作を行う。(A.V.I. 2a, 第38項)




図9
引き金の引き方

右手は銃床のくびれをやや前寄りで握る。伸ばした人差し指はトリガーガードの内側下部に置き、のちに第一関節の付け根または第二関節で引き金を引ける位置にする。
他の四指と手のひらは、一定で強すぎない圧をもって銃床のくびれを包み込むように握る。親指はできるだけ人差し指の前方の節のそばに置く。

人差し指前方二つの関節を曲げることで一連の動きとして引き金を後方へ引く。※圧点(撃針が落ちる直前にトリガーが一段重くなる)が感じられるまで引いたら、続けて均一にさらに指を曲げて(押し切って)発射に至る。

(※圧点は早すぎる「トリガーの引き」を防ぐためのものである。ガク引きのような急激なトリガーの動きは確実な射撃を妨げる。)




図10
弾薬の抜き取り=アンロード

号令:「Entladen!(アンロード)」

小銃は装填のときと同じ位置に構える。左手は小銃を握り、親指が左側、他の四指が右側で弾倉部を挟むように保持する。
アンロードは立射姿勢でのみ実施する。(A.V.I. 2a,第33項)

ボルトをゆっくり、かつ完全に後退 - 前進させる(※右回し〔閉鎖操作〕は行わない)。
この操作により、薬室および弾倉にある弾薬を1発ずつ取り出す。取り出した弾薬は右手で弾倉部から拾い上げる。
弾薬ポーチは号令指示があるまで開けない。(A.V.I. 2a,第38項)




図11
ボルトの解放(コッキングの解除)

1.左手の指先でマガジンフォロアを弾倉内へ押し下げる。
2.右手でボルトをマガジンフォロアの上を越えるように前進させ、左手の指を離したのちもさらに前方へ送る。
3.左手は四本の指でボルトの上に載せ、ボルトが後退しないように保持する。
4.その間に右手は銃床を握り、引き金を後方へ引く。この際、親指の第二関節でボルトが後退しないよう支える。
5.左手でボルトハンドルを右回しして閉鎖する。
(A.V.I. 2a,第38項)




図12
銃剣の装着

号令:「Seitengewehr auf!(銃剣装着!)」

1.右手で小銃を体の正面中央で保持、銃身を体側へ向ける。
2.左手(手の甲が体側)で銃剣の柄をつかみ、銃剣鞘から引き抜く。そのまま着剣装置に差し込み・押し込んでリング(止め輪)が“カチッ”と確実に係止するまで装着する。
3.小銃を元の保持位置に戻す。

備考(Bemerkungen)
4.銃剣装着は多くの場合、伏射姿勢で行う。 ただし移動中や直立姿勢でも実施できる。(A.V.I. 2a, 第42, 43, 44項)

5.廃止事項:「ひざまずいての銃剣装着」




図13
銃剣を鞘に収める(A.V.I. 2a 第45項)

号令:「Seitengewehr an Ort!(銃剣、所定の位置へ!)」

小銃は銃剣装着時と同じ持ち方で右手に保持する。
右手親指で銃剣の固定ボタンを押さえ、左手で銃剣を持ち上げてそのまま鞘に差し入れる。

新規定:力任せに銃剣を装着・収納することは禁止。着剣装置の据え付け部が緩むためである。(H.Dv.257 第88項)




図14
3. Karabiner 98 kurz を用いた訓練上の改正事項

号令:「Wendung mit Gewehr ab!(小銃を“下げ”の姿勢で回れ)」

理由:
下げ銃で方向転換を行う際、Karabiner 98 kurz は Gewehr 98 よりも重心が低いため、銃床が体の動きに遅れやすく、振り回しにくい。
ゆえに訓練生はとくに Karabiner 98 kurz の場合、右手で銃を体側へしっかり押し付けて保持すること。

右手の親指は、回れの動作中に銃に強く当てて(押さえて)制動をかけ、銃床が遅れて振られるのを防止する。
(A.V.I. 2a,第26項)




図15
「下げ銃」握りでの外開き角

Karabiner 98 kurz の重心が低いことは「下げ銃」の握りにおける外開きを難しくする。
親指で銃に押圧をかけ、開きすぎ(過大な外開き)にならないようにすること。
体格の大きい射手は銃をわずかに滑らせて調整する。
(A.V.I. 2a,第8項)




図16
4. 給弾不良
装填が原因の作動不良

弾薬が5発クリップから弾倉へ十分に押し込まれていなかったため、ボルトの前進で弾が斜め前方に導かれてしまう。その結果、フィーディングランプに弾が当たり(衝突し)、給弾が止まる。

処置:
ボルトを後退させてから、必要に応じて弾倉底板を取り外して対処する(→ 図5参照)。




図17
二重装填による作動不良(ダブルフィード)

この不良は図16のような原因がある状態で、ボルトをいったん後退させた直後に、すぐ前進させてしまうことによって生じる。
その結果、次弾が前進給弾され、すでに前方にとどまっていた弾と互いに押し合って両者が噛み込み・挟み込み状態となる。

処置
ボルトを後退させ、銃を振る・揺すぶるなどして弾を取り除く。この際、決して3発目の弾薬を用いて(押し込んで)対処してはならない。

銃を叩く場合は、手で行うこと。道具等で叩くと木部(銃床)が損傷するおそれがある。

弾倉底板を取り外すと、不良の除去が容易になる(→ 図5参照)。




図18
5. 発射の過程

引き金を引くと、保持されていた撃針が解放され、撃針ばねの力で前方へ一気に進む。撃針は弾薬の雷管を打ち、これによって雷管と装薬が点火される。生じた火薬ガスは弾丸を銃身内へと押し進め、銃口から外へ押し出す。

弾丸の最大径は、ライフリングの山間で測った銃身内径よりも大きいため、弾丸は銃身の溝へ圧入され、その溝に沿って進む。この結果、弾丸は長軸まわりに右回りの回転を与えられ、銃口を出た後の横転や転がりを防止する。




図19
6. 弾薬

A = S-Patrone S弾

B = sS-Patrone sS弾
より長く・より重く、後方に向かって細くなる弾頭(=ボートテール)をもつ実包。国防軍で採用。

C = Platzpatrone 27 mit Papiergeschos 訓練用弾薬27
紙製弾頭の空砲。

1 = Hulse … 薬莢
2 = Zundhutchen … 雷管
3 = Pulverladung … 装薬
4 = Geschoss … 弾頭




図20
7. 射撃学の基本概念
弾丸に作用する力: 発射ガスの推力(Pulverkraft)、重力(Schwerkraft)、空気抵抗(Luftwiderstand)




図21
弾道図(飛翔経路の模式図)




図22
狙点

弾道は延長した銃身孔軸(Seelenachse)より下へ沈む。
目標に命中させるには、距離が伸びるほど増える下降量分、(銃を)上げて補正しなければならない。

照準装置は照準線を向けるべき点、すなわち狙点を、目標のすぐ近くまたは目標そのもの上に置けるようにする。




図23
照準

小銃はリアサイトの上縁を水平に保ったうえで、
① 眼、② リアサイト上縁中央、③ フロントサイト先端、④ 狙点が一直線(照準線)に並ぶように合わせる。




図24
照準の効果

リアサイトを適切な距離目盛に合わせて銃口の向きを必要量だけ上げることで弾道が狙点を通るようになる。
ここでいう「Abkommen」とは,射撃の瞬間に照準線が向けられていた点(=実際に狙っていた点)のことである。




図25

照準誤差

a = Gestrichenes Korn:正しい!
 (フロントサイト先端がリアサイト上縁とちょうど同じ高さに“すり付け”られている状態)

b = Vollkorn:高(遠)着(くもり・薄暗い天候で起こりやすい)
 (フロントサイトを多めに見せる=出し過ぎ)

c = Feinkorn:低(近)着(明るい光で起こりやすい)
 (フロントサイトを少なめに見せる=隠し気味)

d = Rechts verkantetes Visier:右・低着
 (銃を右に傾けて照準した場合)

e = Links geflemmtes Korn:左に外れる(右からの太陽光でフロントサイトにグレアが出た状態)

f = Rechts geflemmtes Korn:右に外れる(左からの太陽光でフロントサイトにグレア)




図26
散布界/散布

できるだけ同一条件で同じ小銃から複数発を射つと、弾は同一の点には当たらず、ある面積に分布する。これを散布という。

原因

1.銃身の振動
2.気象の変動による影響(主として風)
3.弾薬の差
4.射手の照準・狙いの置き方・距離見積りの誤り

散布は縦(高低)方向の方が横(左右)方向より一般に大きい。また、散布の中心部に着弾が最も密集する。




図27
地形の傾斜が散布に与える影響

上り坂の地形(a - b)は着弾の縦方向の広がりを小さくし、
下り坂の地形(c - d)はそれを大きくする。




図28
照準有効域

一定の大きさの目標に対して、照準器(サイト)の設定を変えずに命中させられる空間(距離帯)を照準有効域という。
Visierbereich = 区間 A - B

「Karabiner 98 kurz」は、その弾薬により非常に広い照準有効域、すなわち弾道の低伸性が非常に大きい。
そのため、照準器の設定が多少誤っていても、目標に命中する見込みが高まる。




図29
掃射空間と遮蔽角

ある特定の目標をねらって撃つ射撃は、その目標の前後の一定の空間も危険にさらす。
この空間を「掃射空間(bestrichener Raum)」という。すなわち、弾道が地形に対して目標高以上まで持ち上がらない範囲である。したがって、その広がりは主として地形に依存する。
掃射空間が大きいと、予備兵の前進や弾薬の補給が困難になる。

遮蔽物の背後で、弾道が入り込まない空間を「遮蔽空間(gedeckter Raum)」と呼ぶ。
これらは射撃や小休止の合間に前進を行う際、常に探して利用しなければならない。




図30
8. 射撃姿勢の種類 伏射・支えあり

小銃はリアサイトと前部銃身帯(Unterring)の間で依託物にのせる。
射手の体は目標に対してやや斜めに横たえる。
腰を折らない(股関節を曲げない)。
脚とかかとは地面に密着させ、あまり広げない。
体は両肘の上にしっかり乗せる。
右手は銃床のくびれ部を握り、親指は下向きに力をかける。
左手はトリガーガード前方で手のひら全体を用いて銃を支持し、親指は銃床に沿わせ、他の四指は軽く曲げて銃床にゆるく当てる。
銃床は左手で下から支える方法でもよい。
両腕で銃口(照準線)を狙点に向ける。
右手で小銃を強く肩に引きつける。
息を吐き、射撃の瞬間まで呼吸を止める。
この姿勢は野外で、とくに防御時、積極的に採用すべきである。




図31
伏射・支えなし

この射撃姿勢は「伏射・支えあり」と同じであるが、ただ砂嚢等による銃の依託が省かれるだけである。
この姿勢は主として攻撃時に必要となる。




図32
膝射

射手は左足を、同時に右足のつま先付け根で回転しつつ、右足つま先のやや前に一歩踏み出し、右膝の上に身を落とす。
その際の右足は伸ばしても、引き付けても、足裏を平らに地面へ置いてもよい。左足を前後へ出し入れすることによって上体の重量配分をどうするかは射手に任される。

小銃は右手で前方へ運び、左手でほぼ重心部をつかんで支持する。
左肘は左膝の上に骨と骨が直接当たらないように置く。
右手は銃床を握り、小銃をしっかり肩に引き付ける。
右肘はほどよく持ち上げるが、肩の高さを超えない。
背の高い穀物、ヒース等の中では、射手は高い膝射を取って射撃しなければならない。




図33
座射

小銃の取り扱いは膝射(図32参照)に準ずる。肘は両膝の上に置くが、骨と骨が直接当たらないようにする。
背を木に寄り掛からせ、枝に小銃を載せる、あるいは幹に小銃を押し当てることが推奨される。

注記:この姿勢の高さをより明瞭に示すため、図ではその姿勢の高さを必要とする地面の植生を省略してある。




図34
立射・支えなし

射手は小銃を持ち上げながら半身で右(半右)へ向き直り、新たにとった線上で右足を右へおよそ一歩出し、トリガーガードを前方にして小銃を右足の内側に置く。
膝は軽く伸ばし(突っ張り)、腰と肩は足と同じ向きに回す。
体重は両足に均等にかける。
小銃は膝射のときと同様に前へ運んで保持する。
左腕は小銃をできるだけ垂直に下方から支える。
頭部はやや前傾し、銃床に軽く頬を付ける。首すじは緊張させない。
この射撃姿勢は近接戦、追撃、および横方向に素早く移動する目標に対して用いる。




図35
立射・樹木に寄りかかって

身体と左腕を樹木に寄せかけ、小銃は左手の中に軽く保持する。
右利きの射手は、敵からの視認をより避けるため、樹木の右側に小銃をもたせかける。




図36
樹木を利用した支え

射手は確実な立ち位置または座位を見いだし、小銃をしっかりと支える(載せる)よう努めなければならない。
注意:木材(樹木)に載せて支えると、弾が狙点よりも高い位置に当たりやすい!




図37
9. 分解と結合

(すべての銃携行者は本項について訓練されなければならない!)

ボルト機構の取り外し

ボルトを開いてから再び閉じることによって撃発機構はコッキングされる。セーフティーレバーは立てる(上位置)。
左手の親指でボルトストップ(1)を横へ引き、右手でボルトをレシーバーから引き抜く。




図38
ボルトの分解

1.左手で遊底(ボルト)をつかみ、その前面(遊底面)が下を向くようにする。
2.左手の親指で撃針後端の押し金(1)を後ろへ押し下げる。
3.右手で部品 (2) をねじって外す(H.Dv.257 第79項参照)。




図39

4.左手で撃針 (1) をまっすぐに立て、銃床側面にある撃針分解ディスクの穴に差し込む。
5.左手の親指でセーフティー(3)を下へ押し下げていき、撃針ナット(4)が回せるようになるまで保持する。
6.右手で撃針ナットを右または左へ4分の1回転させてから、持ち上げて取り外す。




図40

7.撃針ばねを下に押し付けていた左手親指をゆっくり離してばねが緩むまで戻す。コッキングピースを撃針から外し、セーフティーレバーを右側へ倒して引き抜く。
8.組み立ては逆順で行う。それ以上の分解は兵器係のみが実施する。




図41

分解したボルトの各部
1 = ボルト本体
2 = コッキングピース一式
3 = 安全装置
4 = 撃針ナット
5 = 撃針
6 = 撃針ばね




図42
弾倉底板の取り外し

左手でカラビナーを保持する。
右手で実包の弾頭先端(※平時は代用弾を用いる)を使って保持ボタン(1)を押し、弾倉底板(2)を下方へスライドさせる。
装着する際は、右手の平で底板を前方へ押し込む。




図43

弾倉の分解部品
1 = フォロアー
2 = 送弾子ばね
3 = 弾倉底板




図44
10.カラビナーの取り扱い

損傷を避けるため建物内、とくに階段では銃床のくびれ部で抱え、腕の中に収めて運ぶこと。
同時に運ぶカラビナーは2挺まで(各腕に1挺ずつ)。銃同士を触れさせてはならない。




図45

乾燥していてほこりの無い適切な場所で、カラビナーは銃架に立てかけて保管せよ!
ボルト機構は緩めた状態(撃針がコッキングされていない状態)、マズルキャップは装着、スリングは短く。
銃床を新たにニス塗りした場合は、スリングを長く。(新H.Dv.257 第90項)




図46

雨で濡れたカラビナーを熱いストーブの近くで乾かしてはならない。木部が反り、射撃性能が損なわれるためである。
布で拭き取り、できるだけ温度が一定の室内に保管すること。
マズルキャップなしで銃を壁に立てかけてはならない。
兵舎・宿営では、可能な限り武器は施錠保管すること。




図47

カラビナーへの装備品等の吊り下げは禁止。
カラビナーに装備品やその他の物品をぶら下げるのは誤りである。これにより部品が曲がり、結果として射撃性能に悪影響を及ぼす。
銃各部の分解時に、力ずくで引っ張ることは禁止。




図48

塞がれた銃口からの射撃禁止。
土砂・雪・油脂などで銃口が詰まったカラビナーから発砲してはならない。銃身膨張となる可能性がある。

マズルキャップの取り外しは一時的な場合のみ。
照準・射撃・哨戒時に限り一時的に外してよい。それ以外は常にカラビナーに装着しておくこと。

急激な温度変化時の取り扱い。
金属部に結露が出なくなるまでは、マズルキャップは装着、ボルトは閉鎖のままとする。その後に清掃する。

禁止事項。
銃身や各穴に向かって息を吹きかけて、埃を吹き入れることは禁止。




図49

薬莢が凹んだり変形している弾薬は使用してはならない。給弾不良の原因となる。
装薬を抜き取った弾薬を使用すると爆発事故※につながる。そのような弾薬は弾頭がゆるんでいることで見分けられる。

【※訳注釈】
装薬が無い弾薬で射撃した場合、雷管だけが発火するため弾頭が銃身内で停弾する。この状態で次弾を射撃すると銃身破裂に至る可能性がある。




図50
カラビナーの清掃

新型クリーニングキット34型の構成部品(図50/51)
1 = 清掃用チェーン(1)
1 = 銃身ブラシ(2)
1 = オイル塗布用ブラシ(3)
1 = パッチ押し具/タンポン押し(4)
1 = 薬室/薬莢底清掃具(5)
若干の清掃用布/紐
1 =金属製ケース(6)

あわせて:各種の既存オイルを混合した新しい銃用清掃オイル

利点:
発射時にオイルの燃焼を防ぎ銃身を保護する
錆の発生を防止
銃身内の清掃と維持
可動部の滑らかさを保持

欠点:
高価である。したがって節約して使用すること。
オイル以外に必要な物:銃用グリース、亜麻仁油ニス、 清掃用布、木片




図51
新型クリーニングキット34型の利点

1.一人で取り扱いができる。
2.銃身内を保護※できる。(前提:清掃チェーンのフックを必ず閉じる/マズルカバー装着/通常の布を用いること)

※訳注釈
清掃チェ−ンがアルミ製のため、銃身内やライフリングに傷をつけない。

3.新しい清掃オイルは発射時のオイルの燃焼を防止※。

※訳注釈
従来の清掃オイルでは銃身内に塗布したオイルが発射時に霧化し燃える可能性があった。

4.野外でも営内でも同一手順でよい。(従来は異なる手順)


清掃規定

1.通常清掃:
射撃していない・濡れていない・著しく埃を被っていない場合。
主清掃(より徹底した清掃)は毎回の射撃後、または銃が濡れた/ひどく埃を被った時、兵舎格納前に行う。

2.部品をヤスリがけしたり、黒い斑点や錆痕を削るのは厳禁。
銃身内の固着物の除去は武器下士官(兵器係)のみが実施。

3.射撃の直前に清掃布・紐で銃身内のオイルを拭い取る。(怠ると命中精度が低下)

4.清掃具は砂から保護し、毎回の清掃後に器具、とくにブラシを清潔に保つ。

5.月1回は兵器係室で乾いた布・紐を通し、きれいな銃身内にオイルを塗布(2回)する。




図52
Karabiner 98k 主清掃の実施

目的
1.予備的なオイル塗布で浮かせた発射薬の残りカスや異物を除去する。
2.腐食防止のため全パーツを清掃する。

実施
1名で行うこと。

手順(概略)
1.マズルカバー装着(キャップの蓋を開く)。
2.ボルトを抜き取る(図37)
3.清掃ブラシにオイルを付け(図54)、薬室側から銃身へ2回通す。
4.清掃用布・紐は清掃用チェーンの二重フックに掛ける。

そのために:
 a) フックを開く。
 b) 布中央をスイベル(チェーンの環)まで持っていく。
 c) 親指と人差し指でフックをしっかり閉じる。(さもないと銃身内に傷が付く)
 d) 右手で布・紐をフックの端部の中へ引き込む。全ての紐(繊維)は端で確実に保持されていなければならない。

5.乾いた布・紐を付けた清掃用チェーンを、薬室側から銃身に通す(図52)。




図53

6.そのためにカラビナーを床(地面)に銃床を下にして立てる。次に左手をフロントサイト後方の銃身部(図53)に添える。右手でクリーニングチェーンを銃身内に通して引く。引く際は、清掃用の芯(パッチ)を前後に何度も往復させて引き抜く。清掃芯は固くしすぎないこと。

7.乾いた清掃芯を、汚れが付かなくなるまで順次通す。芯が汚れた場合は、汚れた面を内側に向けてもう一度引き通す。これを繰り返し、銃身内に固着した残渣だけがわずかに残る程度になるまで行う。




図54

8.オイル塗布用ブラシをチェーンの2つのフックに掛けて、銃身内へ挿入する。

9.オイルブラシにオイルを差す:
 a) 滴下バルブ(オイルボトルの弁)の胴を人差し指と中指の間でつまむ。
 b) 親指で滴下バルブを押して、数滴のオイルを出す(ブラシを軽く湿らせる)。

10.オイルブラシを銃身の中を2回引き通す。

11.マズルカバーを外す。マズルカバーも清掃する。




図55

12.薬室/薬莢底清掃具で拭う!このために清潔な清掃用布・紐を、薬室/薬莢底清掃具の穴に通し、ギザギザの突起にしっかり結び付ける!同じ長さの両端を柄(え)のまわりに巻き付ける!

13.ボルトを分解する!(図38~40) 清掃する! 注油する!

14.その他の鋼製部品を清掃し、注油する!




図56

15.銃床とハンドガードを清掃し、亜麻仁油を塗る!(図56)

16.銃床のはめ込み部に銃用グリースを塗る!

17.カラビナーを組み立てる!

18.清掃具、特に清掃ブラシを清掃する!

主清掃は毎回の射撃の直後、行軍の後、または強い粉じん汚れの後にただちに行う予備的な注油によって容易になる。残渣や異物は油と混ざり合うようにしておくべきである。

予備的注油の順序:

1.銃口カバーを付ける! 蓋を開ける!

2.ボルトをカム(コッキング)保持位置まで引き戻す!

3.清掃ブラシに十分に油を付ける!(図54)
 清掃用チェーンに取り付けて、銃身内に1回通す!




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