■木製ストック
木製のストックは当初、優れた加工性・衝撃の吸収力・美しい外観・割れにくさ・変形のしにくさなどで銃床の素材としては最も適している胡桃(ウォールナット)の単材から加工していたが、ドイツ国内では大量の入手ルートが確保できず1937年頃より供給が不足。寒冷地での強度低下などの問題もありブナやカエデなどの代用素材を研究したが「そり」が多く小銃の命中率に悪影響を与えた。
その後、様々な素材をテストした結果、ドイツ国内でも大量に入手可能で供給に問題の無いブナ材を使用し、薄く切りだしたブナ材を接着剤(フェノール樹脂)で貼り合わせ重ねたラミネート材(積層材)を採用することに決定。ストックの材料変更は1938年以降、各生産工場にて順次実施された。
写真のストックは1941年製。
ラミネート材は重量が200gほど重くなる反面、強度が増し、湿気や気温による変形やそりの発生が抑えられる他に、木材原料の節約にもつながる。本銃はラミネートストックとなっており、単材とは異なる独特の模様が美しい。この模様は木目のように見えるが、実際には層になった接着剤がそのように見えているだけで木目ではない。
木材表面は機械で研磨したのちステイン系の塗料で仕上げられているようで明るい木部の色が印象的。ニスなどは塗布されていないので、表面にツヤはない。
中央に穴がある円形金具はボルトスリーブ(ボルト後部の部品)から撃針を取り外す際に使用する。撃針を穴に差し込み、ボルトスリーブを上から押し込みながら(スプリングが圧縮される)、撃針後部のストッパーを90度回転させると撃針が外れる。
1944年以降、生産性向上のため一部の製造メーカーでは撃針分解用ディスクが廃止され、代わりとなる穴がバットプレート側面に加工される。「普通の穴」だが撃針の分解は問題なく行える。
初期の生産型は削り出しで製作されたフラットタイプのバットプレートが装備されていたが、1939年12月以降はラミネートストックの後端をより保護できるようにプレス製のカップ型が登場する。バットプレートは鉄の地がむき出しのまま表面処理がされていない「白磨き」の仕上げ。当時の写真やオリジナル仕上げのまま現存するKar98kを確認するかぎりすべてが「白磨き」であり、黒染めは確認できない。使用中の摩耗によって黒染めが落ちて金属地が露出した状態では無いことに注意。
またボルトの撃針を分解する円形のディスク部品も同様に白磨きとなっている。
レシーバーが収まる内部は複雑な形状に加工され表面仕上げが省かれている。ラミネートストックは約1.7ミリの薄板を使用しており、その積層ラインがよくわかる。
銃剣用の着剣装置はストック先端に取り付けられる。
H型バンド金具の形状に合わせた削り込み加工は、バンド金具の形状簡略化に伴い1943年頃より省略される。
写真左側、楕円形の埋め込まれた小さな金具はクリーニングロットのネジ受け。
ストック内側には「6567」の打刻されたシリアル番号の他、鉛筆のようなもので手書きした番号も入っている。