■木製ストック ウォールナット単材
Kar98k木製ストックの主な変遷は次の通り。これらの変更は各生産工場で段階的に行われたため、変更時期にはかなりの幅があり、単材のストックは在庫量の関係か、1944年や1945年製も少量が確認できる。
1935年:ウォールナット単材 ※写真「A」
1937年後半から:ブナ積層材へ材質変更 ※写真「B」
1939年3月から:クリーニングロッドの受け金具位置変更
1939年12月から:カップ型バットプレート導入 ※写真「C」
1944年から:撃針分解ディスクの廃止 ※写真「D」
1934年から製造がスタートしたKar98kは優れた加工性・衝撃の吸収力・美しい外観・割れにくさ・変形のしにくさなどで銃床の素材としては最も適しているウォールナット(クルミ)の単材から加工されていた。
ストックの形状に大まかに加工された伐採直後のウォールナットのブランク材は多くの水分を含んでいるため、専用の乾燥室に積み重ねた状態で14か月間の乾燥を行う。この間、何度も積み替えを行い、水分含有量を12%以下まで落とす。この後に、フライス加工でストックの外観を整え、再度乾燥させる。
銃に使用するウォールナット単材は加工後のそりや変形を防ぐための乾燥に1年以上を要し生産性が悪い。また保管場所の確保や保管中の維持管理にも手間を要する。
ウォールナット単材の木製ストック。重量はバットプレート込みで1,247g。表面は着色の無いオイル仕上げのため、ニスを塗ったようなツヤは無い。
リアサイトが載る下側に複数の数字が確認できる。一つは製造番号の「9111」で、この上に鉛筆と思われる「9111」の数字が書き込まれている。
もう一つは「7 25 40」の数字。1940年7月25日、または1940年の第25週(この場合1940年6月)の生産であることを示し、後者の場合、7はロットなどを示す可能性がある。この時期では多くの生産品が積層材ストックへ切り替えており、ウォールナット単材は少数と思われる。
レシーバーが収まるストック内部はかなり複雑な形状に加工されている。
ストック中央部には射撃時の反動を受け止めて木部の破損を防ぐスチール製クロスボルトが左右に貫通して取り付けられている。この部品は黒染め無しの白磨き仕上げ。
クロスボルト左側にはマウザー・オーベルンドルフ工場を示す「655」のバッフェンアムト。
楕円形の小さな金具は差し込まれたクリーニングロッドのネジ受け金具。クリーニングロッドは初期型が長さ25cm、後期型が32cmとなっており、1939年3月から順次変更された。この木製ストックは32cmに対応した仕様になっており、1940年というストックの生産時期と整合性が取れている。
「WaA655」のバッフェンアムト。
ストック先端には銃身受けと着剣装置を兼ねる金具が差し込まれ、ピン止めされている。
金具前面には「655」のバッフェンアムト、製造番号の下2桁「11」の刻印。
バットストック右側の刻印。国家鷲章、ドイツ陸軍を示す「H」、「WaA655」のバッフェンアムトが2つ並ぶ。
バットストックに設けられた撃針分解用のディスク。ここも白磨き仕上げ。小さく不鮮明ながらマウザー・オーベルンドルフ工場を示す「WaA63」と思われるバッフェンアムトが確認できる。
スチール削り出しのバットプレートは白磨き仕上げ。製造番号「9111」が消され新たな番号「67671」が打たれているが、これは戦後の処理と思われる。また小さく薄い刻印であるが「WaA655」のバッフェンアムトが確認できる。
銃身上部を覆うハンドガードもウォールナット単材。内側には銃本体と一致する製造番号「9111」が打たれている。