■銃口まわり / バン・システム その1
銃口から出る発射時のガスを利用して銃口部のピストンを動かすガストラップ方式を採用したG.41(M)。ドイツ軍はデンマーク人である Soren Hansen Bang が開発した機構を利用しているため、本項ではこのシステムを「バン・システム」と呼ぶ。バンはデンマーク陸軍の技術部門で勤務しており、最初のバン・システムの特許は1901年に出願、1903年に公開となっている。これ以降、バンはアメリカやイギリスでも改良型バン・システムを搭載した銃の試作を行っており、半自動銃の開発に積極的な人物であったことが推測できる。
写真下がマウザー社のG.41、上がワルサー社のG.41。
ドイツ陸軍兵器局は1920年代末から1930年代にかけて半自動小銃の研究を進める中で、銃身内にガス取り出し穴を設ける方式に慎重な姿勢を取るようになった。ガス穴による銃身の汚れや腐食・劣化、さらに初速や命中精度への悪影響を懸念する考えがあったようだ。1938年には兵器局が「銃身には穴を開けず、銃口からガスを取り出す」という条件を明確に示しており、この考えがG.41の開発でも要求された。マウザー社とワルサー社はいずれもこの要求を守り、弾丸が銃口を通過した直後の発射ガスを銃口部で捕らえてピストンを作動させる「バン(Bang)・システム」系のガストラップ方式を採用した。興味深いことに、両社の銃は作動機構や機関部の設計が大きく異なるにもかかわらず、銃口部の全体的な構成や外観はかなり類似している。
ただし、マウザー社とワルサー社が互いの設計を参考にした、あるいは兵器局がバン・システム方式そのものを具体的に指定したことを示す資料は確認できない。 両社がそれぞれ独自にバン・システムへ到達した可能性もあれば、兵器局が両社へ情報を共有していた可能性も考えられる。
バン・システムを構成する主要部品。右からマズル・コーン、ピストン、フロントサイトベースが一体となったスリーブ、スリーブ保持金具。これ以外にピストンの動きをボルトキャリアへ伝える作動ロッドが含まれるが、掲載品は部品が除去されており付属しない。部品点数は5点と少なく、シンプルな機構に見える。
こちらはG.41(W)の銃口まわり(こちらは作動ロッドの部品もあり)。基本構造はマウザー社とまったく同じである。異なる部分としてはピストンとボルトキャリアをつなぐ作動ロッドがマウザー社は銃身の下側、ワルサー社は銃身の上に配置されている点が挙げられる。またスリーブを保持する部品がマウザー社は銃身と別部品、ワルサー社は銃身と一体になっているため、マウザー社の方が部品点数が1つ多い。
銃口に装着されるマズル・コーン。発射ガスの一部を内部にためて、ピストン側へ流す役割を果たす。また空砲射撃専用のマズル・コーン(ガスノズル P)も用意されている。これは空砲弾の木製弾頭を粉砕するため、銃口穴の径が小さく、また外観の識別としてシルバー仕上げになっている。
G.41(M)にはマズル・コーンを脱着する際に使用する専用工具「ガスノズル・レンチ」が付属する。この工具は弾倉を取り外す際に使用する突起や清掃用具を取り付ける三角形の切り欠きなどがあり、複数の機能を有している。
スリーブ前面にあるスプリング内蔵の固定ピンがマズル・コーン側面の切り欠きに嵌合し緩みを防止する。
マズル・コーンはねじ込み式で前後2分割。
内部に設けられた4か所の切り欠きを通って発射ガスがガスピストン側に流れる。
フロントサイトベースが一体となった円柱形スリーブ。ピストンはこの中に納まる。スリーブ後方には8個のガス抜き穴が設けられ、ピストン後退後に不要となった発射ガスが排出される。
フロントサイトベース後方は反射防止の溝が加工されている。
フロントサイトベースの上面に「8178」の製造番号。またフロントサイトフードに隠れてしまう側面に「135」のバッフェンアムトが確認できる。
銃身に装着したスリーブ。ピストンは銃身とスリーブの間に生まれる空間に配置され、銃口の発射ガスもこの中に流れてピストンを押す。スリーブはマズル・コーンの締め込みによって固定される。