■教育展示図表 第84号 / Lehrschau-Bogen Nr.84
1929年にドイツで設立された労働組合「国家社会主義教員連盟」が発刊していた青少年向け雑誌「Hilf mit!」では学校などで使用する教材ポスター「Lehrschau-Bogen」が発行されていた。ポスターのサイズは42×60cm、両面に印刷されており第84号では表面に「擲弾兵の武器 - 小銃」としてマウザー社のG.41を掲載、裏面は「小銃による戦闘射撃姿勢」という内容で構成されている。陸軍総司令部の協力を得て、詳細なイラスト付きでG.41が教育用ポスターに掲載されている点が興味深く、銃の特徴はもちろん、弾薬、弾道学、照準、引き金操作、射撃姿勢までを簡易に網羅しており、資料的価値が高い。
ポスターには発行日時を示す表記が無く、ドイツ軍では制式採用されていないマウザー社のG.41が掲載されていることから、G.41を部隊で試験中だった1942年頃に発行されたポスターではないかと推測した。しかし、調べると第84号のポスターは1944年4月から6月発行の可能性が高いことが判明した。このポスターは1944年4月から6月の「Hilf mit!」新企画「Grenadiere–Panzer–Kanonen(擲弾兵・戦車・大砲)」に合わせて発行されているようで、1944年3月から4月の教員向け雑誌にも、この企画で「擲弾兵の主要兵器である小銃を扱い、Gewehr 41が紹介される」と明記されている。
それではなぜ、1944年発行の教材ポスターに未採用決定から1年以上が経過したマウザー社のG.41が掲載されているのか?その理由は、
1. 陸軍総司令官から提供された古い資料をそのまま使用した。
2. マウザー社 / ワルサー社の違いを重視せず、または理解せず、単にG.41という括りで掲載したものが、マウザー社のG.41だった。
3. マウザー社のG.41も少量ながら実戦部隊に残っていたため、そのまま掲載した。
などが考えられるが、詳細は不明である。
擲弾兵の武器 - 小銃
G41について
Gewehr 41、略してG41は10発装填の半自動小銃であり、単発射撃のみを行うように作られている。銃内部の作動は固定された銃身の銃口前方に生じる発射ガスの圧力によって行われる(ガスノズル式)。ガスノズルは銃口にねじ込まれている。ガスノズル機構が作動しなくなった場合にはGewehr 41を手動で操作することもできる。
照準装置はそれまで一般的に使用されてきたGewehr 98と同じ方式。照尺の設定距離は100~1,200mである。
G41図中の各部名称
Mündung:銃口
Kornschutz:フロントサイト・フード
Stock:叉銃棒
Lauf:銃身
Handschutz:ハンドガード
Visier:リアサイト
Hülsenkopf:レシーバー前部
Verschluß:ボルト機構
Sicherung:セーフティ
Schaft:銃床
Patronenkasten:弾倉庫
Abzug:引き金
Kolbenhals:銃床の握り部/グリップ部
Kolben:銃床後部
Kolben-Kappe:バットプレート
Korn:フロントサイト
Visierklappe:リアサイト・リーフ
Kimme:照門
Oberring:上部バンド
Unterring:下部バンド
Sicherungsflügel:セーフティ・レバー
Ausschnitt zum Einsetzen des Ladestreifens:装弾クリップ挿入用切り欠き
Kammerstengel mit Knopf:ノブ付きボルトハンドル
G41の銃身内部には4本の腔線(ライフリング)が刻まれており、銃腔軸、すなわち銃身中央を長手方向に通る仮想の直線を中心として右方向にねじれている。これによって弾丸はその長軸を中心として右方向に回転する。この回転をライフリングの旋回(右旋)という。この回転によって弾丸が飛翔中にひっくり返ることを防ぐ。腔線と腔線との間に残された部分をランド(山)または Balken と呼ぶ。ランドからランドまでの長さは7.9mmであり、これが銃身の直径、すなわち口径である。
G41用弾薬
Gewehr 41には「s.S.弾」「各種特殊弾」が用意されている。s.S.弾の弾丸は後部に向かって細くなる形状をしている。
「これによってどのような効果が得られるだろうか? 黒板に図を描いてみなさい。」
特殊弾としては「SmK曳光弾」「Pr弾」が使用される。
SmK弾の弾丸には鋼鉄製の弾芯が入っており、装甲板のような、より強固な目標を貫通することができる。
SmK曳光弾は弾丸が飛翔する軌跡を目で確認することができる。
Pr弾は焼夷弾(リン)として使用される。
7.9mm実包の図
Geschoß:弾丸
Stahlmantel:鋼製ジャケット
Bleikern:鉛芯
Patronenhals:薬莢頸部
Hülse:薬莢
Pulverladung:装薬
Zündhütchen:雷管
Rille für Auszieherkralle:エキストラクター爪用溝
Patronenboden:薬莢底部
射撃について
弾丸はなぜ放物線を描くのか。
射撃は命中してこそ意味がある。命中させようとする者は射撃の過程と、そこで作用する法則を理解していなければならない。矢を空中へ放った場合でも、庭のホースから水を噴射した場合でも、あるいは大砲や小銃を発射した場合でも、その軌道は常に放物線となる(図1、M-C参照)。
では、この放物線はどのようにして生じるのだろうか?
実包内の火薬が燃焼すると高温によって大量のガスが発生し、それが膨張しようとする。小銃の場合、ガス圧は3,000at以上に達する。このガス圧が弾丸を銃身内へ押し進め、さらに空中へ飛び出させる。もし火薬の力だけが作用するのであれば、弾丸は速度を失うことなく、そのまま直線上を飛び続けるはずである(M-A)。
しかし、実際にはそうならない。
重力が弾丸を地面方向へ引き下げ(M-B)、さらに空気抵抗が作用するため弾丸はM-Cの軌道を通ることになる。
照準と弾道
我々は弾丸に作用するこれらの力を理解しているので、照準装置を用いて銃身を持ち上げることにより、弾丸を目的の目標へ向かわせることができる(図2から図4)。
風は弾丸を横方向へ押し流す。その場合には、それを見越して反対方向へ照準を修正する(図9A)。目標が移動している場合には、目標の前方を狙わなければならない(図9B)。
危険域
ある目標を射撃すると、その目標の前方または後方に一定の危険な範囲が生じる。この危険な範囲を bestrichener Raum という(図5)。
照準の種類
照準する際には、
・目標に照準を合わせる
・目標をフロントサイトの上に載せる
・目標をフロントサイトの下に隠す
といった方法がある。
照門の中でフロントサイトがどのように見えているか、すなわち銃口をどの程度上下させているかによって、
・gestrichenes Korn
・Vollkorn
・Feinkorn
と呼び分ける。
また、銃身を軸方向に傾ければ銃をカント(傾斜)させた状態となる(図6~8d)。
射撃時の銃の保持
射撃時には銃床の握り部をしっかり握らなければならない(図10)。小銃を肩へ引き付けたら静かに息を吐き、発射するまで呼吸を止める。発射の際には指を均等に曲げて引き金を引く。まず、抵抗を感じるところまで引く。この点を Druckpunkt(引き金の抵抗点)という(図11)。
その後、恐れることなく、しかし引き金を急激にガクッと引くことなく、滑らかに引き切る。冷静さを保つことのできる者だけが、引き金を乱暴に引くことなく射撃できる。
「祖国のために、目と心と手を鍛えよ。」
「Hilf mit!」編集部発行、陸軍総司令部(OKH)との協力による
図:Wysworski
文:Wagner
印刷:Gauverlag Bayreuth GmbH., Bayreuth
小銃による戦闘射撃姿勢
第1項
歩兵用小銃による戦闘射撃姿勢にはさまざまな種類がある。ここに描かれているのは膝射姿勢である。射手は壁にもたれ、手を支持して射撃姿勢を安定させている。
第2項
その下に描かれているのは小銃を支持物に載せた伏射姿勢である。射手は可能な限り小銃を何かに載せるか、何かに当てて支える射撃姿勢をとるよう努めるべきである。つまり小銃を支持物の上に載せるか、少なくとも何かに寄せて支えるのである。
第3項
依託なしの膝射姿勢。地表の草木などを越えて射撃する場合に用いる。射手は、左腕を膝の上に載せて支持する。
第4項
その下には伏射姿勢の射手が描かれている。射手は左手を小銃の下に入れ、小銃の重心がある位置を下から支えている。小銃を、石、鉄、コンクリート、木材などの硬い物の上に直接載せてはならない。
それはなぜだろうか?
第5項
射撃時の基本姿勢。図は依託物を使用しない伏射姿勢を上方から見たものである。射手は目標に対して身体をやや斜めにして伏せ、左手を銃床に添えている。
第6項
敵と不意に遭遇した場合の射撃。
a)約5mの距離から行う腰だめ射撃
b)速射
状況を素早く把握し、ただちに行動することが擲弾兵に求められる資質である。擲弾兵は常に戦闘準備を整えていなければならない。
第7項
ここでは3人の射手による立射・依託なしの射撃姿勢を見ることができる。左の射手は左肩を木にもたせている。中央の射手は右肘を木に当てて支えている。右の射手は小銃を木のひび割れた樹皮に当てて支えている。このように小銃を物に当てて支える射撃姿勢を「angestrichen(依託射撃姿勢)」という。
第8項
座射姿勢の射手が描かれている。彼は目標をしっかりと捉え、小銃をできるだけ安定した状態に保持しようとしている。そのため、小銃のスリングを左上腕に巻き付けている。この方法によって小銃を身体にしっかりと固定し、安定させることができる。
第9項
射手は急角度で上方または下方へ射撃する場合もある。特に山岳戦ではこのような状況が生じる。その場合、射手は常に足場を確実にし、できる限り小銃を安定して支えられる場所を確保しなければならない。ここでは下方へ照準している射手を見ることができる。彼は左手で小銃のスリングを非常に短く握っている。その上には、急角度で上方へ射撃している射手がいる。彼があらかじめ石を利用して、どのように確実な足場を作っているかに注目せよ。
第10項
この射手は背の高い草木などの地表の植生越しに射撃しなければならない。彼は木にもたれて座っており、左腕を小銃の支持として利用している。
第11項
左と右にはスキーを装着した射手が描かれている。両者とも雪に覆われた地形で伏射しており、雪景色に合わせた迷彩服を着用している。この場合、とくに重要なのは両肘を確実に支えることである。
左の射手はスキーストックのスノーバスケット(雪輪)を利用して身体を支えている。
右の射手は2本のスキーストックを交差させ、小銃を載せるためのしっかりした支持台を作っている。
まとめ
擲弾兵が訓練において射撃姿勢、照準、命中させる技術を習得したならば、次はここに示した図のようなさまざまな戦闘射撃姿勢を練習することになる。実戦では射手はさらに多くのことを学ぶ。自らの興奮を抑え、勇敢に敵へ立ち向かうことを身につけるのである。擲弾兵が戦場の主導権を握り続けようとするならば、あらゆる戦闘状況を克服しなければならない。擲弾兵とその小銃は一体である。ドイツ軍擲弾兵が自らの武器を使いこなしていることは、我々の敵が被っている大きな損害によって証明されている。