■重機関銃の間接射撃マニュアル その2


図49
Rkr.(角度計測器)による地形角の測定
1.計測器を水平にする。このために水平器(図24参照)を合わせる。

2.基準照準点または他の機関銃を、測定器の望遠鏡で方向 3200に合わせる。

3.基準照準点または他の機関銃を、仰角調整ノブを回して上下方向に合わせる。

4.地形角をRkr.の角度目盛りで1ミル単位で読み取る。300以上の数値はプラス(+)、300未満はマイナス(-)とする(図28参照)。




図50
平行設定の基本
1.機関銃照準器(M.G.Z.)の0–3200ラインは常に射撃方向を指す。

2.角度測定器(Rkr.)では、下部を調整して0–3200または3200–0のラインが目標を指すようにできる。

同じ角度目盛りの数値を持つ2つの照準器を互いに向け合わせれば、それらは並行に設定されたことになる。ただし、照準器自体は反対方向を指す。




図51
調整済みの照準器(M.G.Z.)の方向を、調整を行う角度計測器(Rkr.)と同じ方向に合わせる場合、片方の照準器の角度目盛り値を3200ミル変更する必要がある。

これは、角度計測器(Rkr.)を機関銃の反対方向の3200–0ラインで基準照準点(G.R.P. または Z.)に向けることで行う。




図52
機関銃の向き合わせて照準を合わせる場合、読み取った角度目盛り値を計算上3200ミル変更する必要がある。

読み取った角度目盛り値が3200未満であれば3200を加え、3200より大きければ3200を引く。



図53
角度計測器(Rkr.)や測定区間を使用せずに行う(図2および図19参照)。機関銃は単独または集団で配置される。

正確な射線(フライトライン)の決定が前提となる。分隊長または観測兵は、標桿を立てて射撃位置を大まかに決定する。その後、射撃位置と基準照準点(G.R.P. または Z.)の方向に沿って進み、遮蔽物越しに基準照準点または目標が見える地点まで移動する。そこで標桿を垂直に設置する。




図54
次に、基準照準点(G.R.P. または Z.)から標桿1の延長線上を後方へ戻り、基準照準点または目標方向にある補助目標がかろうじて見える位置まで下がる。そして、その地点に標桿2を、基準照準点 – 標桿1 の延長線上に垂直に立てる。

必要に応じて、基準照準点 – 標桿1 – 標桿2 の延長線上にさらに1本以上の標桿を設置する。




図55
機関銃の照準器(M.G.Z.)では、角度の左右方向目盛りを「0」に設定する。

機関銃の照準器が一番近い標桿の真上に狙いが向くよう、ラフェッテの脚を調整して標桿の列に一致させる。

これにより機関銃は基準照準点(G.R.P. または Z.)の方向を向く。

仰角の大まかな値は、図46および図47の方法で地形角度測定器(Dw.M.)を使って求める。




図56
機関銃の左右方向の固定は、機関銃が基準方向(G.R.)に向けられた時点で直ちに行う。

天候が良ければ、地形上の目立つ地点(教会の塔、電信柱など)に照準を合わせる。

その目標の方向に、最大20m離れた場所まで延長して固定用の杭を一直線上に設置する(図6参照)。

機関銃を固定した際に得られる角度目盛りの数値を照準器で読み取り、機関銃手が記録する。この数値は「基数(Grundzahl)」と呼ばれる。




図57
同一方向射撃(角度計測器・Rkr.1台を使用)

適用条件:
角度計測器(Rkr.)が基準照準点または目標(G.R.P.(Z))および重機関銃(G.M.G.)の両方を照準でき、かつ G.R.P.(Z) - G.M.G.を結ぶ線から側方へ100mを超えて離れていない場合に用いる。

基本:
角度計測器(Rkr.)(基準で3200)を用いて G.R.P.(Z)- Rkr.- G.M.G. の角度(=α)を測定し、それに3200ミルを加減して角度 α1として機関銃に伝える。

これは機関銃照準器(M.G.Z.)の目盛を 0に合わせ、角度計測器(Rkr.)で読み取った角度目盛りを M.G.Z. に設定し、M.G.Z. を Rkr. の方向に向け直す。

これにより G.M.G. の射撃方向は Rkr.- G.R.P.(Z)の線と平行になる。ただし Rkr.- G.M.G. の設置位置の横ずれに相当する分だけG.R.P.(Z)の位置では側方へ外れて通過する。




図58
小隊長は腕振り号令で機関銃に
「左右方向([観測所(B.-Stelle)] - G.R.P.(Z.))」および「大まかな仰角(図46・47参照)」を命ずる。
これはラフェッテの左右射角調整位置をスライドレールのほぼ中央に設定し、かつ遮蔽物を弾丸が越えられるかを判定できるようにするためである(図48参照)。

角度計測器の担当下士官はRkr.をできるだけ低く構え、水平器を合わせ、3脚架台下の蝶ナットを締める(図24参照)。




図59
Rkr.の上部目盛りを3200ミルに合わせ、図26・27の要領で 3200—0ミル のラインで G.R.P.(Z.) に向ける。
目標は、望遠鏡のレティクル縦線が目標を貫くように合わせる。




図60
角度計測の担当下士官は G.R.P.(Z.) への地形角を測定し(図49参照)、小隊長に報告する(例:「−10」)。

その後、Rkr.の切換レバー(上部と下部の回転ギア接続を切り離す)を下へ押し、Rkr.の上部だけを回転させながら、図25の要領で 分隊機関銃のM.G.Z. を望遠鏡で照準する。

望遠鏡のレティクル縦線が、M.G.Z. の中心を通るようにする。




図61
角度計測の下士官は G.M.G.(分隊機関銃)に対する地形角を測って小隊長に報告する(例:「−85」)。

つぎに、測った角(G.R.P.(Z.) - Rkr. - G.M.G.)に対応する角度目盛りの数値を読み取る(例:「5864」)。

読み違い防止のため、望遠鏡をいったん時計回りに“3200”へ戻して、もう一度 G.R.P.(Z.) の方向を確認し、必要なら修正する。

そのうえで、再度 G.M.G. に向け直し、修正後の正しい角度目盛りを読む(例:「5865」)。

覚え書き(規則):角度目盛りは常に小さい値から大きい値へ読んでいく。ゆえに正解は「5865」(「5975」などと飛ばして読まない)。




図62
得た数値 「5865」 を M.G.Z. に設定し Rkr.(角度計測器)へ照準すると、G.M.G. の射撃方向は Rkr. - G.R.P.(Z.) の線に平行になる。
ただし、Rkr. と G.M.G. の横方向の位置ズレ(Stellungsunterschied;例:60m)だけ、G.R.P.(Z.) の右を素通りしてしまう。

この位置ズレ(St.U.)は次のように求める:

角度計測下士官は、G.R.P.(Z.) に向けていた Rkr. の上部を3200ミル だけ後方へ回し、G.R.P.(Z.) - Rkr. の後方延長線を大まかに作る。

伝令(Melder)をその延長線上に立たせ、この線に直角方向へ歩測させて、Rkr. と G.M.G. の横ズレ距離を測り、報告させる。




図63
メートルで得た横ズレの距離は、『MG34 射撃盤(ラフェッテ34用)』の換算表を使って、照準線を何ミル振れば目標を指すかという角度に換算する(同書 p.4–11)。

G.M.G. - G.R.P.(Z.) の距離は、
Rkr. - G.R.P.(Z.) の距離(測距儀で測定)と、
G.M.G. の前後のズレ(推定・歩測・実測)から求める。

例:

距離 G.M.G. - Z. = 1800 m

位置ズレ = 60 m → 換算すると 34ミル(= 34 Strich)




図64
例では G.M.G.(分隊機関銃) が 角度計測器(Rkr.)の右側にある。
したがって、銃の射撃方向を左へずらして 位置ズレ(St.U.) を打ち消し、目標へ向けねばならない。

さきほど求めた補正量34ミルを、既に設定している角度目盛りの値 5865ミル(図61)に加算する:
5865ミル + 34ミル = 5899ミル

覚え方(原則)
左へずらす →「加える(mehr)」
右へずらす →「引く(weniger)」

もしG.M.G.がRkr.の左側にある場合は、求めた位置ズレ(ミル値)を設定した角度目盛りから差し引く。




図65
この角度目盛り「5899ミル」は、観測所(B.-Stelle)から陣地の下士官へ、口頭/書面/合図板(数値を大きく表示した板など)のいずれかで伝達される。
G.M.G. の照準手は、命令「5899ミル」に従って M.G.Z.(機関銃照準器) の角度目盛をその値に合わせる。




図66
照準手はラフェッテの左右調整固定レバーをいったん解除、ラフェッテ上部をスライドさせて M.G.Z.の照準線をRkr.の赤い標示柱(roter Hals ※3脚上部の赤色の部分)に正確に重ねる。
※ 上部マウント・銃床・機関部などを手で横振りして合わせるのは禁止。必ずラフェッテ後部のレールをスライドさせる。

この操作でM.G.Z.の望遠鏡のレティクル縦線がRkr.31の赤い標示柱を通る。
結果としてG.M.G.の射撃方向は目標を指す(図64参照)。

Rkr.への調整が完了したら、左右調整固定レバーを締めて固定し、図50の要領で機関銃を直ちに側方方向に固定する。
残りの機関銃は、図67〜69に従って平行設定を行う。




図67
他の機関銃を平行に合わせる。

基準となる機関銃(G.M.G.)をRkr.でG.R.に合わせ固定したら、残りのM.G.を平行にそろえていく。
※この間、G.M.G.の左右調整固定レバーは締めたまま。

G.M.G.は自分のM.G.Z.の望遠鏡で、隣のM.G.(例:M.G.2)を狙う。

M.G.Z.の切換レバーを押して望遠鏡を振る=左右の大まかな合わせ。

ラフェッテの左右調整ハンドルを動かす=左右の細かい合わせ。

望遠鏡のレティクル縦線が、隣のM.G.のM.G.Z.中央を通るようにする。




図68
数値の伝達。

G.M.G.の射手は、いま読み取った角度目盛りの数値(例:1449ミル)を陣地下士官へ報告。

下士官はこの数値を3200ミルだけ変換(図52の規則)して4649ミルを得る。
命令:「M.G.2! 角度目盛り 4649ミル!」

M.G.2はM.G.Z.を4649ミルにセットする。




図69
M.G.2はラフェッテの後部レールをスライドさせて、M.G.Z.を指示の数値どおりに合わせる。
これでM.G.2の射撃方向はG.M.G.と平行になる。

以後は同じ手順で他のM.G.も順に平行を設定する。




図70
火点の集中。

通常は各M.G.の射撃を目標上で一点に集中させる。細長い目標では必須。

そのため各M.G.の横方向の位置ズレ(G.M.G.に対してどれだけ右/左に離れているか)を見積もるか歩測で測る。
そして『MG34 射撃盤(ラフェッテ34用)』の表でミル(Strich)に換算する(図62–64)。

計算の前提となるのは、射撃位置 - 目標(G.R.P./Z.)間の距離。




図71
仰角(Erhöhung)の求め方。

間接照準で用いる総仰角は、次の合計で決まる。
a) 照準角 …(射撃盤に基づく距離 M.G. - Z. に対する仰角)
b) 地形角の換算量…地形の上り下り分の補正(M.G. - Z.)
c) 気象の換算量 …気温・気圧・風等の補正(※ここでは扱わない)

1.照準角は規定 H.Dv.73 付録6『MG34 射撃盤(ラフェッテ34用)』 の p.3 で求める。
例:射撃距離 1800m のとき +46(ミル)。




図72
2.地形角の換算。

観測所(B.-Stelle)では、計算用メモに基準となる機関銃(G.M.G.)と目標(Z./G.R.P.)が角度計測器(Rkr.)の水平面 に対して上側か下側かを記入する(この情報で、後述の換算表のどの欄を使うかが決まる)。




図73
角度計測器(Rkr.)または地形角度測定器(D.w.M.)で測ったG.R.P.(Z.)(基準照準点/目標)とG.M.G.(基準機関銃)への地形角は射撃データ用スケッチに記入する。

図では次の値を仮定している:

地形角 Rkr. — G.M.G. = 38ミル
距離 Rkr. — G.M.G. = 80m
→ G.M.G.はRkr.より低い位置にあるので下段の欄に記入。

地形角 Rkr. — G.R.P.(Z.) = 12ミル
距離 Rkr. — G.R.P.(Z.) = 1700m
→ G.R.P.(Z.) はRkr.より高い位置にあるので上段の欄に記入。

測定の基準は常に水平に設置した角度計測器(Rkr.)を±0の基準面とする。




図74
Rkr. — G.M.G.の測定された地形角38ミル、Rkr. — G.M.G.の距離80mにおける値から、G.M.G. — Z.の射距離を 1800 m に換算する。
H.Dv.73付録6の換算表によれば結果は1.7ミルである。




図75
Rkr. - Z.(G.R.P.)の距離1700m、測った地形角12ミルを、射距離 1800m(G.M.G.→Z.)に換算する。
H.Dv.73 付録6 p.9 に従うと、11(ミル) になる。




図76
したがってG.M.G. → Z.の地形角は
+12.7ミル(= 四捨五入して +13ミル)となる。




図77
総仰角(気象の影響は考慮しない)の内訳。

a) 照準角(図71参照)= +46(ミル)
b) 地形角(G.M.G.→Z.)= +13(ミル)
合計: a+b=+59(ミル)

機関銃(G.M.G.)には総仰角として「359」を与える。
(= +59 に 水平を示す+300 を加えた数値)
この数値をM.G.Z.の仰角調整ダイヤルを回して設定する。




図78
ラフェッテ34の仰角調整ハンドルを回して、M.G.Z.の仰角用水平器を一致(水平を取る)させる(図14参照)。
これにより、機関銃は命じられた仰角「359」を得たことになる。
その後、ラフェッテ後部にある照準装置の蝶ナットを締め付けて固定する。




図79
縦深射撃(Tiefenfeuer)の求め方。

『MG34 射撃盤(ラフェッテ34用)』 (H.Dv.73 付録6、p.13)の縦深射撃表は、100mあたりの縦深の基準値を 1200〜3300mの各距離について示している。
この表は、自動式または機械式の縦深射撃装置に何目盛(設定値は0~10まで)を設定すべきかを教える(図17・18参照)。

例:射撃距離 1800m の場合は、(四捨五入して)2目盛を設定する。

注記: 設定手順は図17・18を参照。



図79の図説明

タイトル:縦深射撃表(s.S.弾用) 100mの縦深に対して

1マーク=3目盛り

この図は平坦地での射撃のみに適用される。
目標付近の地形が仰角方向に大きく傾斜している場合は、縦深射撃を増やさなければならない(H.Dv.240 p.18〔射撃表〕参照)。

(弧の数字)
1200 / 2000 / 2600 / 3000 / 3300 各弧は射撃距離(m)を示す。




図80
横幅射撃の求め方

照準線を目標(Z.)の中央に向けた G.M.G.は、たとえば幅100m・距離1800mの目標を、その全幅にわたって射撃すべきである。

該当する横幅射撃のためにラフェッテの左右射角制限ストッパーを設定する位置は、『MG34 射撃盤(ラフェッテ34用)』 p.13から求める。射撃距離1800mでは、幅50mの横幅射撃に対して(四捨五入して)3である。したがって幅100mなら 2×3=6。
G.M.G.は右へ50m、左へ50m散らせるべきなので、図16の要領で左右射角制限ストッパーを右3・左3に設定する。

号令:「右3! — 左3!」




図81
三角測量法(Meßdreieckverfahren:角度計測器1台)

角度計測器(Rkr.)が、G.R.P.(Z.) — G.M.G.を結ぶ線から100mを超えて横に位置し、しかもRkr.から G.R.P.(Z.) と G.M.G. の両方へ照準できる場合にこの方法を用いる。

基本:
角度G.R.P.(Z.) — Rkr. — G.M.G.=α と距離Rkr. — G.R.P.(Z.) および Rkr. — G.M.G.を求め、これらの値で間接射撃用計算尺(Meßdreieck)上に三角形 G.R.P.(Z.) — Rkr. — G.M.G. を作る。

作った三角形から角度 G.R.P.(Z.) — G.M.G. — Rkr.=β と辺 G.M.G. — G.R.P.(Z.) を読み取り、それを G.M.G. に適用する。




図82
次の値が求められた:

角度 Z. — Rkr. — G.M.G. = 1160(ミル)

距離 Rkr. — Z. = 2100m

距離 Rkr. — G.M.G. = 270m




図83
これらの間接射撃用計算尺の数値の設定は 図34〜36 の要領で行う。すなわち、

「270」 を基尺に、

「1160」 を右側の角度盤に(※Rkr.はG.M.G.の右に位置している)、

「2100」 を右側の距離尺に設定する。

その後、基尺・右角度盤・右距離尺にある3つの締め付けねじを締める。




図84
これで読み取れるのは:

a) 左側の角度盤における角 G.R.P.(Z.) — G.M.G. — Rkr.は「1052」を示している。

(注意): 常に小さい角度値から大きい角度値へ向かって読み取ること。




図85
b) 左距離尺で距離(G.M.G. — Z.)= 2225m を読む。




図86
G.M.G.が伝達された角度目盛り「1052ミル」でRkr.(角度計測器=Richtkreis)に照準すると、その射撃方向は目標を指す。
この方法では位置差はすでに打ち消されており、考慮する必要はない。
固定は図56に従って行う。
他の機関銃は図67~69の要領で平行に合わせる。


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