■ボルトの分解
ボルトの分解手順。ボルト最後部に突き出たプレートを90度回転させロックを解除する。この部品はボルト本体を貫くファイアリングピンの後部に接続されている。
ファイアリングピンの後部にねじ込んで固定されている金具を取り外す。
ボルト本体をボルトキャリアから引き抜く。
ボルトとボルトキャリアが分離した状態。
ファイアリングピンの取り外しにはボルトキャリアを工具として利用する。まずはボルトキャリア後部にボルト後部を差し込み、ファイアリングピン後部の切り欠き部とボルトキャリアー内部の切り欠き部を嵌合させる。
L字型の溝によって保持されているファイアリングピンの固定金具を外すため、お互いを押し込みながら金具が外れる方向に回転させる。
差し込んだボルトを引き抜くと、ファイアリングピン固定金具(ボルトキャリア側に残っている部品)が外れているのがわかる。
ボルトからファイアリングピン本体とスプリングを取り出す。
通常分解されたボルト。ボルトキャリアの一部を分解工具として使用する優れた設計ゆえに、ほかの分解工具は必要ない。
■エキストラクター分解工具
薬室内の薬莢を引き抜くエキストラクターの分解専用工具。工具中央にはメーカーコードが判別不能であるがバッフェンアムトが打たれている。
二股に分かれた工具先端をローラーガイドに当て、中央の突起をエキストラクター固定金具に差し込む。テコの原理で写真下側に工具を押し込むとエキストラクター本体との嵌合が外れ、取り外せる。内部のスプリングテンションが強力なため、この工具がないと分解は難しい。
■ボルトの作動メカニズム
MG34の独軍マニュアルに書かれた説明文が簡素で分かりやすいため以下に掲載する。
【作動機構の説明】
MG34は発射のガス圧を利用した自動火器であり、以下の動作をガス圧のエネルギーとスプリングの力によって行います。
・給弾(Zuführen)
・装填(Laden)
・発火(Entzünden)
・薬莢の排出(Entladen = Ausziehen und Auswerfen der Patronenhülse)
【作動の流れ】
・引き金を引くとリコイルスプリングの力でボルトが前進します。
・ボルト前進中にベルトリンクまたは弾倉から弾薬を一発引き抜き、それを銃身内に押し込みます。
・銃身の薬室直前のカム溝(バレルエクステンション内側の溝)と、ボルトヘッドのラグがねじ込むように導かれ、これにより銃身とボルトがしっかりと閉鎖されます。
・同時に撃針保持レバーが、ボルトキャリアの斜面により押し下げられ、撃針が解放されます。
・解放された撃針は撃針バネによって前方へと飛び出し雷管を打撃、弾薬を発火させます。
・銃身とボルトは互いに閉鎖された状態のまま、発射の反動で後退します。
・ボルトヘッドは、ローラーやガイドによってカムに導かれ、閉鎖を解除します。これによりボルトと銃身が分離され、ボルトはさらに後退します。
・薬莢はエキストラクターによって引き抜かれ、エジェクターとエジェクター・ストップによって下方へ排出されます。
・同時に、撃針スプリングとリコイルスプリングは再び圧縮されます。
銃身はボルトヘッドの回転によって閉鎖が解除されるまでの範囲でのみボルトに追従します。閉鎖が解かれると、銃身を前方位置へ押し出すロッドとそのスプリングの力によって、銃身は即座に前方位置へ戻されます。
弾薬の供給にはベルトリンク、またはスプリング式給弾機構を備えたドラム型弾倉が使用されます。
■ボルト オープン状態(射撃開始前)
ボルトヘッドからはファイアリングピンは見えず、ボルト内でコッキングされ、後方にさがった状態にある。
■ボルト 前進時 1
引き金を引いて勢いよく前進したボルトは、弾薬を薬室に押し込みながらさらに前進。
■ボルト 前進時 2
バレル後部の傾斜にローラーガイドが当たるとボルト本体は傾斜に沿って右回りに回転を始める。
■ボルト 閉鎖時
ボルト本体が回転すると、銃身側とボルト側の双方のリブが噛み合って閉鎖・ロックする。完全閉鎖と同時にファイアリングピンを後方に保持していたシアーが持ちあげられて、ファイアリングピンはスプリングのテンションで前進。雷管を叩く。
■ボルト 撃発~後退
撃発により銃身内の弾丸を押し出すと同時に、ボルトにも後退の力が加わる。銃身本体とロックしたボルトは一体となって僅かに後退(ショートリコイル)。この際、銃身の後退は銃口に設けられたリコイルブースターによって加速される。銃身はレシーバーにぶつかり後退がストップするが、ボルトはレシーバー内部に設けられた傾斜にローラーガイドを当てながら後退することで閉鎖時とは逆の左に回転。約80度回転すると銃身とのロックが解除される。
さらにボルトの左回転と同時にファイアリングピンがコッキングされる。
こちらがレシーバー内に設けられたボルトを回転させるための傾斜部。後退するボルトのローラーが当たり、銃身との閉鎖を解く。傾斜が設けられているのは片側のみ。この部品は表面硬化処理されたニッケルクロム鋼が使われておりリベット接合でレシーバーに固定されている。
■ボルト 後退1
銃身とのロックが解除されたボルトはエキストラクターによって薬莢を引き抜きながらさらに後退。
■ボルト 後退2
レシーバー側に設けられた突起によって可動式のエジェクターが押されると薬莢は下側に蹴り出される。
ここまでが1発の射撃サイクル。MG34で連射をする場合、1秒間に15回この動作が行われる。