■Kar98kへの装着








工場生産時の完全オリジナル状態を保った狙撃仕様のKar98kは現存数が少なく入手困難、工場生産時のオリジナルだが一部部品が交換されている品も希少で高額。市場に流れている多くの品は通常型Kar98kに後付けでマウントと望遠照準器を装着した個体が多く、これに様々なリプロ品が混じる。

本項の掲載品は通常型のKar98kにマウントと独軍オリジナルの望遠照準器を後から取り付けた仕様のため、工場で最初から狙撃銃として生産された個体では無い点は予めご了承いただきたい。そのため銃本体については詳しく触れない。

狙撃銃のKar98kはバットプレートの肩当部にチェッカー模様の滑り止めを加工したもの(1944年中盤以降)、セーフティーレバー形状を改造(望遠照準器との干渉防止や操作性の向上)したもの、命中率向上を目的として引き金を引く重さ(トリガープル)を軽くする改造を施すなど、一部の個体には狙撃銃専用の仕様があるものの、通常型との差は少ない。また通常のKar98kには無い場所にバッフェンアムトや製造番号、独特の検査刻印が打たれるようで、これらはオリジナルの真贋を判断する際の材料となる。

初期型となるロー・ターレットは1940年1月、マウザー社で1,340挺を生産。1943年後半から1944年前半に J P Sauer & Sohn でも少量が生産された。ハイ・ターレットは1943年後半から主にマウザー社で生産、44年頃には J P Sauer & Sohn でも生産された。このためターレットマウントが付いたKar98kの銃本体もマウザーとJ P Sauer & Sohn のみ。これ以外で製造されたKar98kにターレットマウントが付いている場合は後付けの可能性が高い。


















望遠照準器が装備されると5発クリップによる給弾ができないため1発ずつの給弾となる、起こしたボルトハンドルと望遠照準器の隙間が狭いためボルトの操作性が低下する、望遠照準器の取り付け位置がやや高いのでバットストックへの頬付けが甘くなる、などのマイナス面がある。前後マウントと望遠照準器による重量増は656g。

当時のマニュアルには市販の望遠照準器を装着したKar98kについて以下の記載がある。

・市販望遠照準器を装着したKar98kは狙撃兵が単一目標を攻撃するために用いる。望遠照準器付きの銃が正しい状態であれば良好な射撃結果が得られる。
・一部には命中精度向上のため、トリガープルが軽くなる改造が施されている。
・4~6倍の市販望遠照準器を使う。高い射撃性能を要求されるため、銃と望遠照準器は丁寧に扱うこと。望遠照準器の取り付けにはわずかな変化でも悪影響を及ぼすため、射撃性能を常に確認する。銃と望遠照準器は同一の製造番号でなければならない。
・望遠照準器やマウントはわずかな衝撃でも射撃性能が変化する。照準の修正や修正のためのネジを緩める作業は武器係のみが行い、望遠照準器の分解は禁止。照準の点検も武器係が立ち合いのもとで実施する。




アイアンサイトで照準を行うために設けられたマウントの穴。あくまでも望遠照準器が破損した時などの緊急用であり、視野は必要最小限しか見えない。




■Kar98kの命中精度(通常型と狙撃仕様)

生産されたすべてのKar98kは工場内で射撃試験が実施され、規定以上の命中精度が保たれる。この試験内容は次の通り。

射撃距離 100m
射撃数 5発
・直径8cmの円に3発の弾痕が収まる
・直径12cmの円に5発全弾の弾痕が収まる
のどちらも満たす。

この試験において、特に命中精度の高い個体が選別され狙撃銃へと改造される。「特に命中精度の高い個体」に関する具体的な規定・数字の情報は不明だが、各部隊における4倍望遠照準器付Kar98kの照準調整時の合格基準がマニュアル(D136/2)で示されている。

射撃距離 100m
射撃数 5発
・直径7cmの円に5発の弾痕が収まる
・平均着弾点が照準点を中心とする直径5cmの円内に入る
のどちらも満たす。

以上から、距離100mの射撃において、通常のKar98kは直径12cmの円内に、狙撃仕様は直径7cmの円内に集弾する精度を最低でも有している。




■Zielvier、ZF4、ZF41 の見え方比較





■Zielvier

像は極めて解像度が高く鮮明かつ明るい。T字のレティクル線も鮮明で標的は狙いやすい。覗いた際の筐体の縁が薄く見え、目障りにならないため視野が広く感じられる。製造から80年以上が経過した古い光学機器とは思えず、最近製造された新しい製品のようだ。暗所でも肉眼に近い明るさで見えるため、悪条件下でも十分に使用できる。ガラス表面での光の反射を大幅に低下させるレンズコーティングも施されていないが、フレアやゴーストの発生も少ない。レティクルの調整ダイヤルや視度調整レバーの操作も適度な重さがあり、カッチリと作動する。総じて不満のない印象。






■ZF4

1943年末から生産がスタートしたZF4は既存の小火器用望遠照準器を一本化するという目標があった。Kar98kの望遠照準器もZF4へ切り替えられるハズだったがZF4の生産数が少なく、搭載例は僅かにとどまった。「ZF4の倍率は4倍である」というのが一般的な認識だがこれは誤りで、2.6倍が正しい倍率。

Zielvier と比べ明らかに視野が狭く、倍率が低いため遠方の視認性が悪い。像がやや暗く、暗所での使用は難しい。太いレティクルは視認性に優れるがやや目障りに感じる。歴然とした性能差があり、Zielvier に慣れた兵士がZF4を手にしたら、がっかりしたに違いない。光学性能だけを比較した場合、Zielvierを10点とすればZF4は5点くらいの評価である。

長所は小型・軽量で各部の調整ダイヤルは操作しやすく、Zielvier には無い左右調整(ウィンデージ)のダイヤルを備えている点。







■ZF41

倍率は1.5倍。通常の射撃において命中率の向上と効率的な射撃を行うための望遠照準器であり、精密な狙撃用途として開発された照準器ではない。このため Zielvier や ZF4 と同じ土俵で比較することは適当ではないのだが、狙撃銃が不足していたドイツ軍ではZF41を狙撃用途として使用することになる。

ZF41本体と目の距離が30cmほど離れているため、視野は極端に狭い。像は暗く、暗所はもちろん、薄暗い状況下では目標が確認できない。1.5倍は低倍率なので遠方の射撃には適さない。

一方で照準器外の視野が広く見渡せるため、全体の状況がつかみやすい。さらにこの小型照準器はKar98kのボルトや装填動作を一切妨げないという大きな利点がある。銃付属のアイアンサイトに比べれば明らかに狙いやすく、照準も早い。当初の開発意図に沿った照準器に仕上がっているのだが、狙撃用途としては不向という評価になってしまう。




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